中国古典 | 呻吟語の名言
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 忍激の二字は、これ禍福の関なり

 「忍激」とは、じっとこらえて辛抱することと、
カーッとなって感情を激発させることで、
この二つのどちらかをとるかが、幸と不幸の分かれ目になるのだという。

いやな上司とか、横柄な取引先の担当者とかに対しては、
ついカーッとなる場合がある。それを抑えるにはどうしたらいいか。
日頃から対策を心がけていなければならない。

 ある人は、「そんな相手に粘ってよくよくつき合ってみれば、
必ずいい面を見せるから、 そのいい面を見て対応していく」という。
自分なりに工夫した方針を用意して臨めよということ。

 隔の一字は、人情の大患なり

 「隔」とは、分けへだてをすることで、
これははなはだ人情に反しているという。

つまり、あらゆる人間関係において、
えこひいき程、人の心を傷つけるものはなく、
「隔」を行って恨みを招かなかった人はいない。

 えこひいきは、本人が、そんな事をしているつもりがなくても、
得てして、そうとられる事が、よくあるから、特に上司はよく自戒して、
痛くもない腹を探られることがなきように、
日頃の行いを配慮する必要がある。

 

 沈静なるは最もこれ美質なり

 沈静(落ち着いて静かなこと)が、最も好ましい。

 そういう人は心がしっかりすわっている。

 多弁で、騒がしい人よりも
沈着冷静で的を得た的確な行いや発言をする人のほうがまさっている、

これが「徳」を身につけるひとつの条件にもなる。

 

 智愚は他なし、書を読まざることに在り

 「智」と「愚」の分かれ目は、本を読むか読まないかにある。

 ここでは、「書」とは、古典や歴史書を指し、
「愚者は経験に学ぶが、智者は古典や歴史書で学ぶ」という。

古典や歴史書を学んでいれば、未経験の事態に遭遇しても
ある程度は古典や歴史書で得た知識が、手助けや参考なるだろう。

 

 専欲は成り難く、衆怒は犯し難し

 「専欲」はかなえがたく、「衆怒」に逆らうことはできない。

 「専欲」は自分ひとりの欲望。「衆怒」は大勢の怒りのこと。

強引に自分の考えを押しつけるだけでは、
周囲の反感を買う恐れがあり、事はスムースに運ばなくなる。

 

 人を責むるには含蓄せんことを要す

 相手の過ちをとがめるときは、
いいたいことを控え目にするほうがいい。

人を責めるときは、直線的に責め立てないで
婉曲えんきょく(遠まわし)ないいかたをしたほうがよい。

 さらに露骨ないい方は避け、
何かの譬えでも引いて、それとなく指摘したほうがよい。

 

 士気は無かるべからず。傲気は有るべからず

 「傲気」は捨ててもいいが「士気」はもたなければならない。
「士気」は人としての誇り、「傲気」は人を凌ごうとする気持ち。

「士気」をもつ者は自分と他人の別をわきまえ、
あくまで正しい道を守って、やたら他人に迎合しない。
傲気をもつ者は上下のけじめをわきまえず、
高い地位ばかり狙って与えられた責任を果たそうとしない。

 

 才を露わすはこれ士君子の大なる病痛なり。

 才能をひけらかすのはよくないが、飾ることはもっと悪い。

飾ることとは、
もっていない才能をもっているかのように見せかけること。つまり虚像。

 その才能が実像なのか、
巧みに実像を飾らせた虚像なのかを
見極める眼力が必要となる。

 

 愈いよ上れば則愈いよ聾瞽なり

 地位が高くなればなるほど、耳が聞こえなくなり眼が見えなくなる。

地位が高い者は下位の状況が把握づらくなり、意見が聞きづらくなる。

 組織が大きくなればなるほど、
現場の声はトップに伝わりにくくなる。
したがって、いかにして組織全体の風通しを良くし
動脈硬化を防ぐかが課題となる。

 

 小人を処するは、遠ざけず近づけざるの関に在り

 小人は近づけると負担になるし、
かといって冷遇すると恨まれて、何をされるかわからない。

適当に距離を保って遇するのがいい、というのです。

 つまり、やっかいなことは
「さわらぬ神に祟りなし」として、
距離を置いて静観すべし、とのようだ。

 

 失意の人に対しては矜ることなかれ

 失意の人に対しては得意げな態度を見せてはならない。

人間は、相手の傷の痛さがわからない。だから、
その傷を更に痛めつけるようなことは厳に戒めよ、
と説いているのです。

互いに、いたわり合う心が人間関係の基本となる。

 

 善く恩を用うる者は妄りに施さず

 恩を善用する者は、むやみに物を施し与えない。

恩賞、恩恵を小出しにすると、
積み重ねられた費用のわりに、その効果は少ないが、
「一点豪華主義」でいくと、その施しは善用となる。

費用や恩賞、恩恵を受けた人達の効果を計算に入れたい。

 

 福は禍なきより大なるはなし。

 不幸のないことが、何よりも大きな幸せ。
幸せを手に入れようとあくせくするのが、何よりも不幸。

 あまりにも欲望を求めすぎると
「過ぎたるは及ばざる如し」となり、

さまざまな弊害を招く恐れが生じる。

 

 君子は小損を重んじ、細行を矜み、微敝を防ぐ

 立派な人物は小さな損失を重視し、
ささやかな行動を慎み、かすかな破れも見逃さない。

 大金持ちの息子は、ある日突然貧乏になるわけではない。
毎日、毎月、少しずつ財産を減らしていった結果、
ある朝、眼が覚めたら素寒貧になっているのだ。
毎日の積み重ねを責めないで
その朝だけを問題にするのは、愚かなことです。

 愚者はただ其の極まるを楽しみ、智者は先ず其の反らんことを懼る

 愚者は今の幸福を只々享受するだけ。
智者は今の幸福に感謝し、不幸に転じたときの備えを怠らない。

 月はいつまでも満月でいるわけではなく、やがて欠けてくる。

 黒字を続ける会社の経営者にたとえれば、
並みの経営者は
バブル崩壊の例にみるように、銀行の甘い融資勧誘に応じて
設備投資や会社規模の拡大を図ることに陥りやすい。
 有能な経営者は、やがて来るであろう
黒字の反動による赤字に備えた、堅実な経営を維持する。
 
忍激にんげき二字にじは、これ禍福かふくかんなり
かく一字いちじは、人情にんじょう大患たいかんなり
沈静ちんせいなるはもっともこれ美質びしつなり
智愚ちぐなし、しょまざることに
専欲せんよくがたく、衆怒しゅうどおかがた
人をむるには含蓄がんちくせんことをよう
士気しきかるべからず。傲気ごうきるべからず
さいあらわすはこれ士君子しくんしの大なる病痛びょうつうなり。
いよいよのぼればすなわいよいよ聾瞽ろうこなり
小人しょうじんしょするは、遠ざけず近づけざるのかん
失意しついの人に対してはほこることなかれ
おんもちうる者はみだりにほどさず
さいわいわざわいなきよりだいなるはなし。
君子くんし小損しょうそんおもんじ、細行さいこうつつしみ、微敝びへいふせ
愚者ぐしゃはただ其のきわまるを楽しみ、智者ちしゃは先ず其のかえらんことをおそ
 ※守屋 洋著 中国古典「一日一話」より引用

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